〈一日モデルコース〉地域全体が世界遺産!キリシタンの里・長崎市外海(そとめ)地区でド・ロ神父の足跡をたどる〈前編〉
2018年に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。
2023年には登録から5周年を迎え、国内のみならず海外の方も長崎へたくさん訪れるようになりました。
今回は、構成資産の中の長崎市外海(そとめ)地区にある出津(しつ)集落・大野集落をめぐる一日モデルコースをご紹介します。
紹介するスポットには世界文化遺産に登録されていないものもありますが、地域全体に息づく信仰や営みを感じてくだされば嬉しいです。
掲載日:2024年03月21日
ライター:ことぐらし
潜伏キリシタンの里・外海(そとめ)を訪ねる
禁教令が敷かれた江戸時代。
厳しい弾圧と追害を避けるため、長崎のキリシタンは住まいを捨てて各地にバラバラに散っていきました。
外海のキリシタンも例外でなく、厳しい弾圧と迫害を避けて暮らさなければなりませんでした。
そのような状況下の外海で、現在までキリシタンの里として信仰が受け継がれてきたのは、海岸線が入り組み、また山深い地理的条件から、取締りを逃れやすかったこと。
また、当時の外海は、大村藩の領地と佐賀藩の飛び地の領地が入り組んでおり、佐賀藩領地は取締りが比較的緩やかだったという事情もあったそうです。
ここ外海から五島列島などの島々へ信仰を携え、さらに逃げていった方も多く、食文化や暮らし、精神が各地に伝わる基点になった場所でもあります。
今でもつつましく生きる谷の人々
外海の中には黒崎・神浦(こうのうら)・出津(しつ)・大野など人々の暮らす集落が複数あり、今回の一日観光は出津集落からスタート。
出津集落は集落全体が世界文化遺産の構成資産のひとつに選ばれています。
私自身ときどき訪れる出津集落の印象は、いつもひそやかで、しずやか。
今あるもので工夫しながら暮らしたり、季節のめぐみに感謝して食材を大切に調理したり、とつつましやかに暮らすその精神はきっとキリシタンの里だからなのでしょう。
ガイドの方が教えてくださった情報によると、クリスチャンの割合の全国平均は0.3%、長崎県は4%、出津集落は50.4%なんだそうです。この土地では、クリスチャンの方が多数派。
ひっそりと信仰を実践しているこの土地で、観光という枠を超えた、歴史体験と文化理解の旅へ進みましょう。
〈外海歴史民俗資料館〉で外海のアウトラインを知る
民俗資料とキリシタン関連資料を多く展示する、外海歴史民俗資料館へやってきました。
一階には、牛に引かせ、畝をすき返すカルチベーターなど農耕に使用した資料などが展示されています。
外海の畑は基本的に段々畑が多いため、農耕は決して容易くはなかったことがよくわかります。
また、炭鉱の島・池島で使用されていた掘削機の模型も。
二階にはキリシタン関連資料があり、メダイやオラショの書、ロザリオなどが展示されています。
オラショとは「祈り」という意味で、禁教の間キリシタンの方たちは、心の中でオラショを唱えていたそうです。
口伝で伝承されたオラショの書を見られる貴重な機会でした。※二階は写真撮影不可。
PickUp
ド・ロ神父の功績をたたえる〈長崎市ド・ロ神父記念館〉
出津を語る上で欠かせないド・ロ神父の偉業をおさめた記念館へやってきました。
信仰のみならず、医療や農業・土木・建築・産業においても外海のクリスチャンを牽引したド・ロ神父。
この建物は、当初鰯網工場として建設され、翌年には保育所として使用されるようになったそうです。
館内には、女性たちが着た日本初のユニフォームや、村の6,7割を診療したド・ロ神父の医療器具も展示されています。
建物を出たところには、ド・ロ神父像があり、幼子にほほえみを向ける姿がド・ロ神父らしい仕草だったのだろうと感じました。
像の隣には、出津集落が佐賀藩との藩境にあったことがわかる石碑が。
元々は、山の中に立っていたものをこちらに移したのだそうです。
PickUp
基本情報
開館時間:9時から17時まで
入館料:一般 310円(団体割引・小人料金あり)
入館料には外海歴史民俗資料館の入館料も含まれています。
ハルモニュウムの音色が響く〈旧出津救助院〉★体験あり
ド・ロ神父記念館の目の前にある旧出津救助院。
外海の女性たち、とくに未亡人の貧しさに心を痛めたド・ロ神父が自立のためにと作ったこの施設。
敷地内には、授産場、マカロニ工場、薬局などの建物が揃い、ここで信者の女性たちは寝食を共にしていたそうです。
一階にはド・ロ神父が使いやすく改良した農機具などが展示してあり、二階の祈りの場にはド・ロ神父が故郷から持ってきたというハルモニュウム(リードオルガンの一種)が。
実際にシスターがその音色を聴かせてくださいました。
※今回は特別に撮影の許可をいただきましたが、館内は撮影のできない場所もあるためご注意ください。
重厚感がありつつも軽やかな音色が谷じゅうに響き、とても素敵なひとときでした。
こちらでは各種体験をすることもでき、今回は昔ながらの作り方でパン焼きをしました。
できあがったパンは、素朴で小麦の味が際立ち、とてもおいしかったです。
PickUp
基本情報
開館時間:火~土 9時から17時 日曜 11時から17時(最終受付16時半)
休館日:月
入館料:大人400円(各種割引あり)
食の体験プログラム(別途料金がかかります)は毎月第三木曜日開催。詳しくはホームページを。
ひとつひとつ手作りの料理が並ぶ〈レストラン ラ・メール〉
そろそろお昼どき。
昼食は、道の駅 夕陽が丘そとめにあるレストラン ラ・メールでいただきましょう。
メニューは地産地消の食材を使った定食がメインで、中でもおすすめは天ぷら定食。
ぷりぷりのエビやほくほくのさつまいもなどがさっくりと揚がっています。
定食を頼むとついてくるのが、店内にあるバイキング。
スープから小鉢、デザート、ご飯までおかわりし放題で、あっという間にわんぱく定食になってしまいました。
漬物もおばあちゃんちで出てくるような懐かしい味で、どれを食べてもおいしくて大満足。
滞在目安:45分 旧出津救助院から車で3分
午後一番はド・ロ神父の墓へ。後編へつづく…
PickUp
基本情報
営業時間(ランチ):11時から15時(ラストオーダー:14時)ディナー・軽食営業もあり
定休日:なし(※団体貸切で利用できない日もあるため注意)
今回訪れた場所
Google Mapの読み込みが1日の上限を超えた場合、正しく表示されない場合がございますので、ご了承ください
この記事を書いた人
#ナガサキタビブ 部員(公式ライター)
メジャーどころからニッチな穴場までご紹介します!